VINTAGE ALARM
OWNER'S NOTE
VINTAGE ALARMOWNER'S NOTE / 02

CYMATIME-O-VOX

鳴る黄金のクロノメーター

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CYMA TIME-O-VOX OWNER'S NOTE
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鳴る黄金のクロノメーター

正面はドレスウォッチ

横顔はクロノグラフ

複雑機構なのに薄い

そして、アラームにクロノメーター

矛盾を詰め込んだ

アラーム時計の一つの極北

簡易操作ガイド

  • ① 巻き上げ 上プッシャーを押してリューズを回す
  • ② 時刻合わせ 上プッシャーを押し リューズを引いて回す
  • ③ アラーム設定 下プッシャーを押してリューズを回す
  • ④ ON / OFF 両プッシャー中央でON/どちらかを押してOFF
  • ※ アラーム時刻は双方向で設定可能。
  • より精度を重視するなら、反時計回りで合わせるのを推奨。

NOTE

当時、アラーム腕時計にChronomètreを掲げた例はごくわずかだった。

Time-O-Voxは時計とアラームを一つの香箱で動かすため、鳴動が精度にも影響する。

それでも文字盤にはChronomètre。

さらに、透かしラグを備えた専用造形の金無垢ケースまで用意された。

SPEC

年代
1956年頃
ケースサイズ
34mm
Cal
Cyma R.464
17石
振動
18,000振動/時
香箱
1香箱
手巻き
手巻き
音響
ゴング式
特記事項
18KYG、Chronomètre表記、2プッシャー、透かしラグ

実機鳴動

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01CYMAとは

1891年、Henri-Frédéric Sandozはスイス・タヴァンヌで時計製造を開始した。 Schwob Frèresとの協力を経て、1904年には「CYMA Tavannes Watch Co.」の商標が 登録されている。 3

20世紀に入ると、Tavannes/CYMAは超薄型ムーブメントや高精度時計を展開した。 1910年には日産2,500本規模へ成長し、1913年には1,200人を擁するスイス有数の大規模時計工場となった。 1921年には、部品の互換性を高める新しい製造方法を導入した記録も残る。3

1950年代、CYMAは自社製アラームムーブメント Cal.R.464 を搭載する Time-O-Vox を展開した。1香箱、2つのプッシャーと1本のリューズを組み合わせた 切替機構など、同時代の一般的なアラーム腕時計とは異なる構成を採っている。13

02アラームとクロノメーターという矛盾

精度を求める時計に、アラームを載せる

ここでいう「矛盾」は、アラームを鳴らしながらクロノメーター試験をするという意味ではない。精度を求める時計に、アラーム機構を組み込んでいることを指す。2

『Alarm am Arm』では、当時クロノメーターとして知られるアラーム腕時計は、CymaのほかにFortis ManagerとVulcainの1モデルのみと記されている。

032つのプッシャーとWippe

リューズの接続先を切り替える

Cal.R.464の外見でまず目につくのが、リューズの上下に置かれた2つのプッシャー。この2つは、単なるアラームのON / OFFボタンではない。1

CYMA Time-O-Vox Cal.R.464 ムーブメント全景
Cal.R.464のムーブメント全景。ケース右側にリューズと上下2つのプッシャーが並ぶ。

2つのプッシャーは互いに連動し、一方を押すともう一方が押し出される。上側を押し込むと巻上げ、中央位置ではアラームの作動待機、下側を押し込むとアラーム時刻設定となる。時刻合わせは上側を押し込んでリューズを引いて行う。1

この切り替えを担うのが、Wippe(揺動レバー)を中心とした切替機構。プッシャーやリューズの操作に応じて、リューズの力を巻上げ・時刻合わせ・アラーム時刻設定のそれぞれへ振り分ける。一つのリューズを、用途ごとに使い分けるための仕組みだ。1

CYMA Cal.R.464 Wippeを含む切替機構と上下プッシャー
Wippeを含む切替機構と上下プッシャーの位置関係。 プッシャー操作に応じて、内部の接続先が切り替わる。
04単一香箱のアラーム

時計とアラームで動力を共有する

R.464では、時刻表示とアラームを一つの香箱から駆動する。香箱とは、時計を動かすゼンマイを収める部分。1

時計用とアラーム用に別々の香箱を持つアラーム腕時計も多いが、R.464は一つの動力源を共有する。13

アラームを鳴らせば、そのぶん時計を動かすためのエネルギーも減る。そこでR.464には、アラームの鳴動時間を制限する機構が組み込まれている。資料では、鳴動時間はおよそ8〜10秒。1

掲載個体では、鳴動時間を制御するタイミングホイールが約8秒間作動する様子を実機動画で確認できる。静止画では分かりにくい動きなので、Xに動画を掲載している。6

掲載個体の実測では、1回の鳴動で約9時間分のパワーリザーブを消費した。5

タイミングホイールの約8秒の動きをXで見る
05鳴動中にリューズが回らない

鳴動中は巻上げ側を切り離す

1香箱式のアラームには、鳴動にともなってリューズまで回転する構造が多い。3

R.464では、アラームが作動すると巻上げ機構の接続が外れる。 そのため、アラームが鳴っている間もリューズは回転しない。13

06Time-O-Voxのケースとラグ

Time-O-Voxは、ムーブメントだけでなくケースにも複数の仕様が確認されている。23

『Alarm am Arm』に掲載される金無垢モデルは、直径34mmの14Kケース。最も特徴的なのは、ケースから大きく伸びた完全に透かされたラグで、この金無垢仕様はChronomètreとして紹介されている。2

一方、1955年頃のステンレスモデルでは、ラグの外形自体は金無垢仕様によく似ているものの、透かしは完全ではない。2

さらに別のステンレス仕様では、同じ系統の形状を残しながら、ラグは完全に滑らかで透かし表現そのものがなくなっている。2

1957年頃になるとケースデザインはさらに変化し、金メッキケースに一般的な形状のラグを備えるTime-O-Voxも登場する。2

少なくとも、透かしラグの金無垢、部分的な透かしを持つステンレス、滑らかなラグのステンレス、後期の通常ラグという仕様差が確認できる。23

今回掲載するOWNER'S NOTE個体は、購入書類上では約1956年、34mm、18Kイエローゴールド、Weber & Cie製ケースとして記録されている。4

文献に掲載される14K個体と同じ系統の透かしラグを持ちながら、18Kで仕立てられた実例になる。24

参考資料・出典
  1. REFERENCEB. Humbert, 『Die Armband-Weckeruhr』Calibre TIME-O-VOX No.464(R.464の単一香箱、2プッシャー、Wippe、輪列・鳴動停止機構)
  2. REFERENCELeonhard Beitl, 『Alarm am Arm』(2009), pp.134–136(Cyma Time-O-Voxの金無垢・ステンレス・ラグ仕様、クロノメーター例)
  3. REFERENCEMichael Philip Horlbeck, 『The Alarm Wristwatch』(Schiffer Publishing, 2007), Cyma section pp.96–99
  4. PROVENANCEChrono24 Kaufzertifikat / Plus Ultra AG invoice, Cyma Time-O-Vox Chronomètre ref.1283, 18K yellow gold, circa 1956
  5. OWNER OBSERVATION掲載個体の実測記録(1回の鳴動で約9時間分のパワーリザーブ消費)
  6. OWNER OBSERVATION掲載個体の実機動画(タイミングホイールが約8秒間作動する様子)