CITIZENALARM
国産初のベル腕時計、そして伝説へ。

テキストで読む
1958年、国産初のベル腕時計。
中央の回転ディスクに、2つのリューズ。
その顔は、先行するMemovoxを思わせる。
そして後には、「似すぎてルクルトからクレームが来た」という伝説まで。
簡易操作ガイド
- ① 4時リューズ 時計側の巻き上げ 引いて時刻合わせ
- ② 2時リューズ アラーム側の巻き上げ 引いてアラーム時刻設定
NOTE
初代の中央ディスク型から、やがて4針式へ。
その後はアラームデイト、カレッジアラーム、回転ベゼルを備えたダイバー型も登場し、レディースモデルへも展開。
国産初の一台は、やがてひとつの系譜になった。
SPEC
- 年代
- 1958年頃(初期型)
- ケースサイズ
- 37mm(同型資料)
- Cal
- Citizen 980(同型資料)
- 石
- 17石(同型資料)
- 振動
- 18,000振動/時(同型資料)
- 香箱
- 2香箱
- 手巻き
- 手巻き
- 音響
- 二重裏蓋式
- 特記事項
- 中央回転ディスク、2リューズ、Parashock
実機鳴動
OWNER'S NOTE on X →掲載個体
さらに詳しく
011958年、国産初のアラーム腕時計
戦後のCitizenは、カレンダーや耐震機構など新しい機能を加えながら、時計づくりの技術を高めていった。1957年には、時計部品を加工する自動旋盤や測定機器も自社開発している。3
翌1958年。5月に男性用自動巻き「Auto」、6月に「Alarm」、8月には薄型高級機「Super Deluxe」が登場した。3
Citizen Alarmは、国産初のベルが鳴るアラーム腕時計だった。時計用とアラーム用に2つの香箱を持ち、設定した時刻になるとハンマーが裏蓋を叩く。鳴動時間は約10秒。初期のCal.Aを経て、Cal.980へ移行した。1
当時のスイスでは、防水、カレンダー、クロノグラフ、アラームといった付加機能が時計の商品力になっていた。Citizenもその流れを受け、アラームを「特殊機能製品」として投入している。2
02Citizen Cal.980
初期Citizen Alarmに搭載されたCal.980は、時計用とアラーム用に2つの香箱を持つ。2時位置と4時位置のリューズから、それぞれの機構を操作する。14
その構成は、スイスのA. Schild製Cal.AS 1475によく似ている。Beitlは、AS 1475をもとにしたライセンス生産だった可能性を挙げ、その後Citizenによって変更、改良されたとみている。初期の980には17石、Parashock付きの仕様が確認できる。45
初代の外観にもアラーム機構の特徴がそのまま現れている。文字盤中央にはアラーム時刻を示す回転ディスク。ケース右側には2本の大きなリューズ。さらに初期型では二重裏蓋を使い、内側で生じた音を外側の穴から逃がしていた。2
ただし、中央ディスクまでCal.980に必要な構造だったわけではない。同じ980には、後にアラーム時刻を4本目の針で示す仕様も登場する。4
03中央ディスクから4Hへ
初代Citizen Alarmの顔ともいえるのが、文字盤中央のアラーム設定ディスク。円板全体を回転させて設定時刻を示す方式で、Citizen自身も見やすさと操作性を意識したデザインとして紹介している。2
ところが1960年頃には、アラーム時刻を4本目の針で示す「Four Hands」が現れる。こちらもムーブメントはCal.980。同じ時期にはディスク式の980も残っており、4Hの登場と同時に中央ディスクが消えたわけではない。4
国内では「Memovoxに似すぎてJaeger-LeCoultreからクレームを受け、4Hへ変わった」という話が伝わる。ただ、Citizen公式、Beitl、Horlbeckから、その経緯を裏付ける記述は確認できない。1245
初代と4Hの間に何があったのか。確かな記録が見つからないまま、「ルクルトからクレームが来た」という話だけが、ひとつの伝説として残っている。1245
04その後のCitizen Alarm
Citizen Alarmは4Hで終わらない。Cal.981には「Alarm Date」と書かれながら日付窓を持たない過渡的な個体があり、その後のCal.3100では3時位置に日付表示が加わった。4
さらにParawater、防水仕様、スポーツモデル、ダイバータイプへと展開。女性用のAlarmやLady Alarmも登場し、アラームはさまざまな時計へ組み込まれていった。24
Citizen公式では、その系譜は1970年代初頭まで続く。そして最後に現れたのは、腕時計ではなくアラーム付きの懐中時計だった。2
1958年、国産初の「ベルの鳴る腕時計」として始まったCitizen Alarm。その最後は、腕を離れて懐中時計になった。2
参考資料・出典
- PRIMARY SOURCECitizen Watch, 歴代モデル「アラーム」(1958)(発売時期、Cal.A→980、2香箱、鳴動約10秒)
- PRIMARY SOURCECITIZEN DESIGN, 「The Beauty of Utility / CITIZEN ALARM」(2024)(中央ディスク、2リューズ、二重裏蓋、モデル展開)
- PRIMARY SOURCECitizen Watch, 製品・技術史(1950年代の製品展開、自動旋盤・測定技術)
- REFERENCELeonhard Beitl, 『Alarm am Arm』(2009), pp.122–125, movement table(Cal.980、Four Hands、Alarm Date、後継モデル)
- REFERENCEMichael Philip Horlbeck, 『The Alarm Wristwatch』(Schiffer Publishing, 2007), pp.26, 80–83, 95–96(AS 1475との系譜、Citizenアラームキャリバー)