VINTAGE ALARM
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VINTAGE ALARMOWNER'S NOTE / 03

BASISALARM

触って、見て、聴いて楽しむおもちゃ箱。

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触って、見て、聴いて楽しむおもちゃ箱。

ベゼルでアラームを合わせて、

巻き上げると小窓のディスクが大回転。

スライダーを入れたら、

セミの鳴き声。

簡易操作ガイド

  • ① 動力巻き上げ リューズ通常位置:時計用/アラーム用。2つのゼンマイを順回しで巻き上げ
  • ② 時刻設定 リューズを引いて時刻設定
  • ③ アラーム時刻設定 ベゼルを反時計回りに回して、アラーム時刻を合わせる
  • ④ アラーム ON/OFF 9時位置スライダー:上=OFF/下=ON
  • ⑤ 巻き上げ確認窓 1時窓 時計用/5時窓 アラーム用。赤・白・青のディスクが回転し、巻き上げを確認できる

NOTE

Basis Alarmは、Baumgartner BFG90を積んだ初期アラーム腕時計。

MemovoxやCricketのような高級機とは別に、BFG90はBasis、Lantex、Sheffield、Simplon、Tiorなど複数名で広がった実用側の機構だった。

高級機のような洗練ではなく、機能をそのまま外に出した実用品。

だからこそ、見て、触って、鳴らす楽しさが残っている。

SPEC

年代
1948年頃(同型資料)
ケースサイズ
37mm(同型資料)
Cal
Baumgartner BFG 90
17石
振動
18,000振動/時
香箱
2香箱
手巻き
手巻き
音響
底部ベル式
特記事項
アラーム約10秒、回転ベゼル式アラーム設定、9時位置ON/OFFスライダー、1時/5時位置の巻上げ表示窓

実機鳴動

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01Baumgartner Frères ― 大衆機をつくるという仕事

Baumgartner Frèresは、他社へムーブメントを供給するエボーシュメーカーだった。BFGのムーブメントには、比較的手頃な時計へ組み込むことを前提にした構造が多い。ピンレバー脱進機もそのひとつだった。2

BFG 90は、柱式構造を採用している。平らな地板を柱で組み上げることで、複雑な切削加工を減らした。時刻合わせ機構も文字盤下へ収めず、ムーブメント側へ置く。カップリングレバーには別体のバネを付けず、レバーそのものにバネの役割を持たせている。2

テンプを見ると、スクリューバランスのような突起が並んでいる。ところが実際にはネジではなく、半丸状の飾りが一体で作られている。2

削れる加工は削る。減らせる部品は減らす。高級機のような仕上げとは別の場所に、BFG 90の工夫はある。

02一本のリューズ、一方向で二つの香箱

BFG 90は、時計用とアラーム用に2つの香箱を持つ。2香箱そのものは珍しくない。変わっているのは、その巻き方だ。一本のリューズを、同じ方向へ回して2つとも巻く。12

回転方向を変えて時計用とアラーム用を選ぶのではない。同じ方向へ巻き続けるだけで、双方のゼンマイへ動力を与える。当然、2本が同時に満巻きになるとは限らない。片方が先に巻き上がれば、そこから先はもう片方だけを巻きたい。先に満巻きになった側へ、そのまま力を掛け続けるわけにはいかない。2

BFG 90では、満巻きになった側だけ力を逃がす仕組みを、各香箱の巻上げ部分に入れている。それが滑りクラッチだ。2

ラチェットは二つに分かれ、その間を十字形のバネで押さえる。通常は一体となって回るが、ゼンマイが満巻きになると、その側だけが滑る。2

一本のリューズ、一方向で二つの香箱 補足画像

片方が巻き上がっても、構造上はそこで巻上げが終わるわけではない。満巻きになった側を滑らせながら、そのままもう片方を最後まで巻き上げられる。2

03なぜ、2つの小窓があるのか

滑りクラッチがあるからといって、満巻きになったときの手応えまで消えるわけではない。実際に巻くと、満巻きに近づくにつれて抵抗が強くなり、巻き止まったような感触がある。3

知らずに触れば、そこで止めたくなる。ところがBFG 90は、片方が満巻きになっても、もう片方にはまだ巻き代が残っていることがある。その場合は、満巻きになった側のクラッチを滑らせながら、もう片方を巻き続ける。23

構造を知らなければ、少し怖い。「もう巻けない」と感じるところから、さらにリューズを回すことになるからだ。3

そこで使われるのが、文字盤の2つの小窓だ。Basisでは、1時位置が時計用、5時位置がアラーム用。それぞれの香箱に連動したディスクが、巻き上げている間は回転する。ゼンマイが満巻きになると、その側のディスクは止まる。123

残量を読み取るためのパワーリザーブ表示ではない。どちらがまだ巻かれていて、どちらがもう巻き上がったのかを見るための窓だ。12

一本のリューズを、同じ方向へ回して2つの香箱を巻く。片方が先に満巻きになれば、滑りクラッチが力を逃がす。リューズには巻き止まりのような抵抗が出る。それでも、もう片方を巻くためには回し続けられる。だから、2つの窓でそれぞれの巻上げ状態を確認する。BFG 90の双香箱、滑りクラッチ、巻上げ表示窓は、別々に付けられた仕掛けではない。一本のリューズで2つを巻くために、順番につながっている。23

04同じBFG 90、いくつもの顔

BFG 90はBasis専用のムーブメントではない。Lantex、Sheffield、Simplon、Tiorをはじめ、複数のブランドで使われた。12

中身は同じでも、時計の見た目はかなり違う。SheffieldやLantexには、比較的細身で装飾的なケースが見られる。SimplonやTiorには、より大ぶりで重厚なケースがある。ラグやベゼル、文字盤の仕上げもブランドごとに違う。2

それでも、BFG 90を積んだ時計には共通する部分が多い。回転ベゼル、9時位置のON/OFFスライダー、2つの巻上げ表示窓。ムーブメントの構造が、文字盤やケースにも顔を出している。12

ブランド名や外装を変えながら、同じBFG 90がいくつもの時計になった。Baumgartner Frèresがエボーシュメーカーだったことが、一番分かりやすく見える部分でもある。12

05BFG 90 → BFG 902 ― 外に出ていた機能が消えていく

後継のBFG 902では、BFG 90にあった操作部が整理された。BFG 90では、回転ベゼルでアラーム時刻を合わせ、9時位置のスライダーでON/OFFを切り替える。BFG 902では、アラーム時刻の設定もリューズへ移った。1

一方向へ回せば2つの香箱を巻き、反対方向へ回せばアラーム時刻を動かす。回転ベゼルは必要なくなり、9時位置のスライダーも消えた。1

操作部が減ったぶん、アラームを止める方法も変わった。独立したスライダーがないため、設定したアラーム時刻を動かして鳴動を解除する。後期には、耐震装置を備えた仕様も現れる。1

BFG 90からBFG 902への変化は、高級化というより整理と合理化に近い。二つの香箱を一本のリューズで扱う基本は残しながら、外に出ていたベゼルとスライダーを減らしている。1

BFG 90に並んでいた操作部は、後継では少しずつ時計の中へ戻っていった。1

参考資料・出典
  1. REFERENCELeonhard Beitl, 『Alarm am Arm』(2009), p.20, p.87, p.109, pp.172, 308, 398, 419, 622(BFG 90 / BFG 902、Basis / Fabry / Maxor / Triwera、操作・仕様)
  2. REFERENCEMichael Philip Horlbeck, 『The Alarm Wristwatch』(Schiffer Publishing, 2007), pp.88–91, 168–170(BFG 90の柱式構造、滑りクラッチ、巻上げ表示、ケース・ブランド展開)
  3. OWNER OBSERVATION掲載個体の実機観察(巻上げ時の抵抗感、1時/5時位置の巻上げ確認窓、ディスクの回転)